昔作ったアンプを測定しなおしているうちに、新しいアンプを作りたくなりました。ただし、新たに部品を購入したりする時間もお金もありません。それに計画倒れで終わった部品が結構余っています。それらを活用することにします。それで、今やっているフルレンジスピーカー遊びで気楽に使えるアンプを作る事にしました。それに、ろくたるという屋号をつけながら、現状ではロクタル管のアンプが一つも手元にないので、すべてロクタル管構成とする事にしました。以上、まとめると、
このアンプはまともな測定をする前に、人手に渡ってしまいました。新しくまたつくり直しました。そちらをご覧下さい。3月29日
出力トランス | 山水・HS-5 |
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電源トランス | タンゴ・PH-100S |
チョークトランス | ノグチトランス・10H60mA パラ |
真空管 | 7F7×2、 5AZ4 、7C5×2 |
シャーシは、ウォールナット材のベースに、ホームセンターにあった300mm×200mmの1.5Tの銅板を落とし込んであります。銅板は槌目を付けて六十ハップ(むとうはっぷ)という入浴剤を使った燻仕上げにしました。興味のある人は、左の画像をクリックして拡大してみて下さい。金敷と小さな槌、相応の根気さえあれば誰でも出来ます。
槌目は、好みの大きさ形状に槌の先を加工して、ひたすら叩いていくだけです。燻仕上げは、薬屋またはドラッグストアで、六十ハップと重曹を購入します。六十ハップを適当な割合で湯で薄めてその中に銅板を浸けます。引き出して重曹で洗います。これを繰り返して、好みの色合いになるまで繰り返します。 ようするに入浴剤の硫黄分で銅の表面を腐食させるわけです。最初に、小さな銅の端材で実験してみると良いでしょう。
ウォールナットのベースと同系色の落ち着いた仕上がりになりました。結果、ロクタル管のアルミのハカマやゲッターの鮮やかな光沢を引き立てて良い感じだと思います。
使い勝手の面から、入力の端子やスイッチ類はすべてシャーシ上面の前方に集めました。スイッチは、左が入力ボリューム、中上が出力インピーダンスの切り替え、中下がその右のメーターの表示切り替え、ジャンク品を修理したメーターは出力管のカソード電流の監視用。右のトグルスイッチが電源スイッチになります。
入力端子は、DINの4ピンを使いました。もともと、いわゆるRCAピンジャックという不細工で不可思議なものが嫌いですし、この古色蒼然たるアンプにはむしろ良く似合うと思いました。スピーカーの出力端子はMacintoshのアンプに使われているCHINCH製のもの。私は、良く市販のアンプに使われているバネ式やネジ式の怪しげなものが嫌いで、自分で作るアンプには必ずこれを使います。別に、普通のパーツ屋で売っている圧着端子用のターミナルで十分だと思いますが、このCHINCH製も特に高価でもなく、昔買い貯めてあっただけの事です。その上で、細目の普通の電灯線のスピーカーコードにY型の圧着端子をかしめてドライバーで締め付けるようにしています。要するに、私が普段仕事で使っている動力の木工機械のスイッチ類やコネクタの結線と同じやり方です。これら仕事の機械に、音の良い電線
やら怪しげなコネクターを使うなど、私には恐ろしくて出来ません。オーディオ装置などの玩具なら、指を飛ばしたり大怪我をする心配もありませんから、無責任ででたらめな蘊蓄がまかり通ると思っています。
ちなみに、私が以前勤ていた会社の電気炉では、アーク放電で鉄の溶解・精錬をしていました。ニシキヘビのような電線が通電を始めると電磁誘導でのたうち廻ります。あれを見ていると、ロクでもない電線論議など、見るのも聞くのもいやになりました。まあ、強電と弱電は別物かもしれませんし、何と言ってもオーディオは芸術
だそうですから、一概に言えないという事にしておきます。
これらの入出力端子、それにフューズボックス、電源ソケットもすべて落とし込んで装着する形にしました。シャーシの四周に出っ張りがなくすっきりしました。せっかく無垢のウォールナット材でベースを作るのなら、これくらいの工夫と手間をしても良いでしょう。
このように、木材でシャーシのベースを作るのは、専門の板金の工具も技術も持たない我々アマチュアとってオリジナルなものを作る良い方法だと思います。木工に関してはプロですから、一般の方にアドバイスすると、面の取り方で随分と仕上がりの印象が変ります。アンプベースにしろ、スピーカーにしろアマチュアの人の作ったものが、失礼ながらだらしなく締まりのない印象になるのは、工作精度の悪さをごまかすために、サンドペーパーなどで、無計画に大きな面を取るからだと思います。我々木工屋の世界では、五厘面と言って、通常の工作では1.5mm以上の面は取りません。
業務用の木工機械や高価な電動工具がないからと、言い訳をしないでください。私もアマチュア時代はほとんど手道具だけで工作していました。ちゃんと刃物が研げて、墨の付け方の基本さえ勉強すればたいていの事は出来ます。現に、半世紀前までは、町の建具屋にしろ大工にしろ、箪笥屋にしろそうした道具だけで、当たり前に仕事をしていたわけです。
私は、アンプそれも自作の真空管アンプなど、見た目がすべてだと思っています。こんなことを言うと回路技術や音を、いまだに真面目に追求している人には顰蹙でしょうが、私自身は、もともと電気の事などさっぱり分からず、回路や部品など音が出れば良い程度にしか考えていないので仕方ありません。それに、誰にでも分かる見た目の美しさとか仕上げの丁寧さ、あるいは配線や部品配置の美しさ、そうした事に無頓着で美意識の感じられないアンプに、より曖昧で捕らえ所のない音に対してだけ、強いこだわりなり美意識が込められているとは考えられないのです。
これまではアンプを作るときは、お菓子の空き缶などでバラックで組んで最低限の回路定数を決めていました。その上で、何枚も実体配線図を書き直してからシャーシ図面を起こすようにしていました。今回は、満足な実体配線図を作らず、いきなり配線をしました。そのため、随分きたない配線・部品配置になってしまいました。アンプの音など、配線も含めて見た目で分かると言うなら、このアンプの音はこれまで私自身が作ったものと比べても、その程度という気がします。一応音は出ていますが、測定の結果、容量負荷での安定性など気になる点もあり、いずれ改造をするつもりですが、現状の回路と測定結果を以下に記しておきます。
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